相続税タックスアンサーミニ解説:非上場株式等についての相続税の納税猶予

※ 東日本大震災により被害を受けた場合等の非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例については、「東日本大震災に関する税制上の追加措置について(相続税・贈与税関係)相04」をご覧ください。

 

[平成24年4月1日現在法令等]

 

1 制度のあらまし

 

後継者である相続人等(「経営承継相続人等」といいます。)が、相続等により、経済産業大臣の認定を受ける非上場会社の株式等を先代経営者である被相続人から取得し、その会社を経営していく場合には、その経営承継相続人等が納付すべき相続税のうち、その非上場株式等(一定の部分に限ります。)に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます。

この猶予された税額は、経営承継相続人等が死亡した場合などは納付が免除されます。なお、免除されるときまでに特例の適用を受けた非上場株式等を譲渡するなど一定の場合には、猶予されている税額の全部又は一部を利子税と併せて納付する必要があります。

(注) この特例は、平成20年10月1日以降に相続等により取得した非上場会社の株式等について適用されます。

 

2 特例を受けるための要件

 

被相続人の相続開始前に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づき、会社が計画的な事業承継に係る取組を行っていることについて、「経済産業大臣の確認」を受けておく必要があります。また、相続開始後にこの法律に基づき、会社の要件、先代経営者(被相続人)の要件及び経営承継相続人等の要件を満たしていることについての「経済産業大臣の認定」を受ける必要があります。

  • ※1 「経済産業大臣の確認」は、一定の場合には不要となります。
  • 2 会社が「経済産業大臣の確認」及び「経済産業大臣の認定」を受けるための具体的な要件、手続については、最寄りの地方経済産業局にお尋ねください。
  1. (1) 会社の主な要件
    イ 経済産業大臣の確認及び認定を受けた中小企業者であること
    ロ 常時使用する従業員が1人以上(一定の外国会社株式等を保有している場合には5人以上)であること
    ハ 資産保有型会社又は資産運用型会社で一定のものに該当しないこと
    ニ この会社の株式等及び特別関係会社(注)のうちこの会社と密接な関係がある一定の会社(以下「特定特別関係会社」といいます。)の株式等が非上場株式等であること
    ホ この会社及び特定特別関係会社が風俗営業会社ではないこと
    ヘ この会社の特定特別関係会社が中小企業者であること
    ト 相続の開始の日の属する事業年度の直前の事業年度(相続の開始の日が事業年度の末日である場合には、その事業年度及びその直前の事業年度)の総収入金額が零ではないこと
    チ 経営承継相続人等以外の者が会社法第108条第1項第8号に規定する種類の株式(拒否権付き株式)を有していないこと
    リ 相続の開始前3年以内に受けた現物出資等資産の割合が総資産の70%未満であること
    (注) 「特別関係会社」とは、この会社と租税特別措置法施行令第40条の8の2第8項で定める特別の関係のある会社をいいます。
  2. (2) 先代経営者である被相続人の主な要件
    イ 会社の代表権(制限が加えられた代表権を除きます。)を有していたこと
    ロ 相続の開始直前において、被相続人及び被相続人と特別の関係がある者(被相続人の親族など一定の者)で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、被相続人が保有する議決権数が経営承継相続人等を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと
  3. (3)  経営承継相続人等の主な要件
    イ 被相続人の親族であること
    ロ 相続開始の直前に役員であったこと
    ハ 相続開始の日の翌日から5か月を経過する日において会社の代表権(制限が加えられた代表権を除きます。)を有していたこと
    ニ 相続人及び相続人と特別の関係がある者(相続人の親族など一定の者)で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、これらの者の中で最も多くの議決権数を保有することとなること
    ホ 経済産業大臣の確認を受けた会社の、その確認に係る特定後継者であること
    ヘ 相続税の申告期限まで特例の適用を受ける非上場株式等の全てを保有していること

 

3 特例の対象となる非上場株式等の数

 

特例の対象となる非上場株式等の数は、次のA、B、Cの数を基に(1)又は(2)の区分の場合に応じた数が限度となります。
 「A」・・・経営承継相続人等が相続等により取得した非上場株式等の数
 「B」・・・経営承継相続人等が相続開始前から保有する非上場株式等の数
 「C」・・・相続開始時の発行済株式等の総数

  • (1) A+B<C×2/3 の場合  A
  • (2) A+B≧C×2/3 の場合  C×2/3−B

 

4 納税が猶予される相続税の額

 

次の(1)から(2)を差し引いた税額が納税を猶予されます。(1)及び(2)の税額を計算する場合の経営承継相続人等以外の者の取得した財産は、実際に経営承継相続人等以外の者が相続等により取得した財産によります。

  • (1) 経営承継相続人等が取得した財産が特例の適用を受ける非上場株式等のみであると仮定した場合に算出される経営承継相続人等の相続税額
  • (2) 経営承継相続人等が取得した財産が特例の適用を受ける非上場株式等の20%のみであると仮定した場合に算出される経営承継相続人等の相続税額

(注) その非上場株式等を発行する会社及びその会社と特別の関係のある一定の会社が、一定の外国会社又は医療法人の株式等を有する場合には、納税が猶予される税額の計算の基となる非上場株式等の価額は、その外国会社又は医療法人の株式等を有していなかったものとして計算した金額となります。

 

5 特例を受けるための手続

 

  • (1) この特例を受ける旨を記載した相続税の申告書をその申告期限までに提出するとともに、その申告書に特例の適用要件を確認するための一定の書類を添付する必要があります。
  • (2) 上記(1)の申告書の提出期限までに納税が猶予される相続税額及び利子税の額に見合う担保を提供する必要があります。なお、特例の適用を受ける非上場株式等のすべてを担保として提供した場合には、納税が猶予される相続税額及び利子税の額に見合う担保の提供があったものとみなされます。

 

6 納税猶予期間中の手続

 

 引き続きこの特例の適用を受ける旨や特例の対象となる非上場株式等に係る会社の経営等に関する事項を記載した「非上場株式等についての相続税の納税猶予の継続届出書」を相続税の申告期限後の5年間は毎年、5年経過後は3年ごとに所轄税務署に提出する必要があります。
 なお、継続届出書の提出がない場合には、原則として、この特例の適用が打ち切られ、納税猶予税額と利子税を納付しなければなりません。

 

7 猶予税額の納付が免除される場合

 

 次に掲げる場合などに該当したときには、猶予税額の全部又は一部の納付が免除されます。

  • (1) 経営承継相続人等が死亡した場合
     この場合、死亡があった日から同日以後6か月を経過する日までに「免除届出書(死亡免除)」を先代経営者の相続税の納税地を所轄する税務署長に提出する必要があります。
  • (2) 申告期限後5年を経過した後に、特例の適用を受けた非上場株式等を一定の親族に贈与し、その親族が「非上場株式等についての贈与税の納税猶予」の適用を受ける場合
  • (3) 申告期限後5年を経過した後に、次に掲げるいずれかに該当した場合
     この場合、一定の免除事由に該当することとなった日から2か月を経過する日までに「免除申請書」を先代経営者の相続税の納税地を所轄する税務署長に提出する必要があります。
    イ 経営承継相続人等が特例の適用を受けた非上場株式に係る会社の株式等の全部を譲渡又は贈与(以下「譲渡等」といいます。)した場合(その経営承継相続人等の同族関係者(経営承継相続人等の親族など一定の者)以外の一定の者に対して行う場合や民事再生法又は会社更生法の規定による許可を受けた計画に基づき株式等を消却するために行う場合に限ります。)
    ロ 特例の適用を受けた非上場株式等に係る会社について破産手続開始の決定又は特別清算開始の命令があった場合
    ハ 特例の適用を受けた非上場株式等に係る会社が合併により消滅した場合で一定の場合
    ニ 特例の適用を受けた非上場株式等に係る会社が株式交換等により他の会社の株式交換完全子会社等となった場合で一定の場合

 

8 猶予税額を納付することとなる場合

 

猶予税額の納付が免除される前に、次に掲げる場合などに該当することとなったときは、猶予税額の全部又は一部について利子税(原則として年3.6パーセントです。)と合わせて納付する必要があります。

  • (1) 申告期限後5年以内に、経営承継相続人等が代表権を有しないこととなった場合
  • (2) 申告期限後5年以内の一定の基準日において、常時使用する従業員の数が相続開始時の数の8割を下回った場合
  • (3) 申告期限後5年以内に、経営承継相続人等及び経営承継相続人等と特別の関係がある者(経営承継相続人等の親族など一定の者)が保有する議決権数の合計が、総議決権数の50パーセント以下となった場合
  • (4) 申告期限後5年以内に、経営承継相続人等と特別の関係がある者のうちの1人が、経営承継相続人等を超える議決権数を有することとなった場合
  • (5) 経営承継相続人等が特例の適用を受けた非上場株式等の全部又は一部を譲渡等した場合
  • (6) 特例の対象となっている会社が解散をした場合又は解散をしたとみなされた場合
  • (7) 特例の対象となっている会社が資産保有型会社又は資産運用型会社で一定のものに該当することとなった場合
  • (8) 特例の対象となっている会社の事業年度における総収入金額が零となった場合

 

(措法70の7の2、平21改正法附則63、措令40の8の2、措規23の10)

 

参考:関連コード

 

 

国税庁HPより

 

詳しくは、国税庁HP No. 4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予  を参照

 

<長松ミニ解説>

 

中小企業の未上場会社自社株の納税猶予制度です。農地の納税猶予の制度の自社株版のイメージです。

 

この制度を適用すると、自社株に対する相続税の約80%の納税猶予が受けられます。

 

適用を受ける要件が厳しい事、上記8猶予税額を納付することとなる場合の要件が厳しい事も考慮に入れて判断するのが良いでしょう。

 

個人的には、納税猶予という制度はなるべく使わない方が良いと考えています。

 

長松ニュース一覧へ>>>

 

 

H24.10.3更新  広島市の長松税理士事務所