相続税タックスアンサーミニ解説:農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例

[平成24年4月1日現在法令等]

 

1 特例のあらまし

 

 農業を営んでいた被相続人又は特定貸付けを行っていた被相続人から相続人が一定の農地等を相続し、農業を営む場合又は特定貸付けを行う場合には、農地等の価額のうち農業投資価格による価額を超える部分に対応する相続税額については、その相続した農地等について相続人が農業を営んでいる又は特定貸付けを行っている限り、その納税が猶予されます(猶予される相続税額を「農地等納税猶予税額」といいます。)。


 この農地等納税猶予税額は、次のいずれかに該当することとなった場合には、その納税が免除されます。

 

(1) 特例の適用を受けた相続人が死亡した場合

 

(2) 特例の適用を受けた相続人が、この特例の適用を受けている農地等(「特例農地等」といいます。)の全部を贈与税の納税猶予が適用される生前一括贈与をした場合

 

(3) 特例の適用を受けた相続人(特例農地等のうちに都市営農農地等を有しない相続人に限ります。)が相続税の申告期限から農業を20年間継続した場合(市街化区域内農地等に対応する農地等納税猶予税額の部分に限ります。)
 この場合は、特例農地等の中に都市営農農地等を有していない相続人に限られます。

 

(注)

1 特定貸付けとは、農業経営基盤強化促進法の規定による一定の貸付けをいいます。

 

2 農地等とは、農地(特定市街化区域農地等に該当するもの及び農地法第32条の規定による耕作の放棄の通知(同条ただし書の公告を含みます。)に係るものを除きます。)及び採草放牧地(特定市街化区域農地等に該当するものを除きます。)、準農地(10年以内に農地や採草放牧地に開発して、農業の用に供するもので一定のものをいいます。)をいいます。特例農地等のうち一定の公共事業のために一時的に転用しているものも農地等に含まれます。

 

3 農業投資価格とは、農地等が恒久的に農業の用に供されるとした場合に通常成立すると認められる取引価格として所轄国税局長が決定した価格をいいます。

 

4 都市営農農地等とは、生産緑地地区内にある農地又は採草放牧地のうち一定のものをいいます。

 

 

2 特例を受けるための要件

 

 この特例を受けることができるのは、次の要件に該当する場合です。

 

(1) 被相続人の要件
 次のいずれかに該当する人であること。

 

イ 死亡の日まで農業を営んでいた人

 

ロ 農地等の生前一括贈与をした人
 死亡の日まで受贈者が贈与税の納税猶予又は納期限の延長の特例の適用を受けていた場合に限られます。

 

ハ 死亡の日まで相続税の納税猶予の適用を受けていた農業相続人又は農地等の生前一括贈与の適用を受けていた受贈者で、障害、疾病などの事由により自己の農業の用に供することが困難な状態であるため賃借権等の設定による貸付けをし、税務署長に届出をした人

 

ニ 死亡の日まで特定貸付けを行っていた人

 

(2) 農業相続人の要件

 

 被相続人の相続人で、次のいずれかに該当する人であること。

 

イ 相続税の申告期限までに農業経営を開始し、その後も引き続き農業経営を行うと認められる人

 

ロ 農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者で、特例付加年金又は経営移譲年金の支給を受けるためその推定相続人の1人に対し農地等について使用貸借による権利を設定して、農業経営を移譲し、税務署長に届出をした人
 贈与者の死亡の日後も引き続いてその推定相続人が農業経営を行うものに限ります。

 

ハ 農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者で、障害、疾病などの事由により自己の農業の用に供することが困難な状態であるため賃借権等の設定による貸付けをし、税務署長に届出をした人
 贈与者の死亡後も引き続いて賃借権等の設定による貸付けを行うものに限ります。

 

ニ 相続税の申告期限までに特定貸付けを行った人

 

(3) 特例農地等の要件


 次のいずれかに該当するものであり、相続税の期限内申告書にこの特例の適用を受ける旨が記載されたものであること。

 

イ 被相続人が農業の用に供していた農地等で相続税の申告期限までに遺産分割されたもの

 

ロ 被相続人が特定貸付けを行っていた農地又は採草放牧地で相続税の申告期限までに遺産分割されたもの

 

ハ 被相続人が営農困難時貸付け(注)を行っていた農地等で相続税の申告期限までに遺産分割されたもの

 

ニ 被相続人から生前一括贈与により取得した農地等で被相続人の死亡の時まで贈与税の納税猶予又は納期限の延長の特例の適用を受けていたもの

 

ホ 相続や遺贈によって財産を取得した人が相続開始の年に被相続人から生前一括贈与を受けていた農地等

 

(注) 営農困難時貸付けとは、特定貸付けができない場合において、相続税の納税猶予の適用を受けている農業相続人が、障害や疾病等の理由で特例農地等での営農が困難な状態となったために、その農地等について賃借権等の設定による貸付けを行った場合のその貸付けをいいます。

 

3 特例を受けるための手続等

 

(1) 相続税の申告手続
 相続税の申告書に所定の事項を記載し期限内に提出するとともに農地等納税猶予税額及び利子税の額に見合う担保を提供することが必要です。申告書には相続税の納税猶予に関する適格者証明書や担保関係書類など一定の書類を添付することが必要です。

 

(2) 納税猶予期間中の継続届出
 納税猶予期間中は相続税の申告期限から3年目ごとに、引き続いてこの特例の適用を受ける旨及び特例農地等に係る農業経営に関する事項等を記載した届出書(この届出書を「継続届出書」といいます。)を提出することが必要です。

 

4 農地等納税猶予税額の納付

 

(1) 農地等納税猶予税額を納付しなければならなくなる場合
 次のいずれかに該当することとなった場合には、その農地等納税猶予税額の全部又は一部を納付しなければなりません。

 

イ 特例農地等について、譲渡等があった場合
 譲渡等には、譲渡、贈与若しくは転用のほか、地上権、永小作権、使用貸借による権利若しくは賃借権の設定(一定の要件を満たすものは除きます。)又はこれらの権利の消滅若しくは農地について農地法第32条の規定による耕作の放棄の通知(同条ただし書の公告を含みます。)があった場合も含まれます。

 

ロ 特例農地等に係る農業経営を廃止した場合

 

ハ 継続届出書の提出がなかった場合

 

ニ 担保価値が減少したことなどにより、増担保又は担保の変更を求められた場合で、その求めに応じなかったとき

 

ホ 都市営農農地等について生産緑地法の規定による買取りの申出があった場合や都市計画の変更等により特例農地等が特定市街化区域農地等に該当することとなった場合

 

ヘ 特例の適用を受けている準農地について、申告期限後10年を経過する日までに農業の用に供していない場合

 

(2) 納付すべき税額に係る利子税


 上記(1)に該当して農地等納税猶予税額を納付しなければならなくなった場合には、その納付すべき税額について相続税の申告期限の翌日から納税猶予の期限までの期間に応じて年3.6%(一定の部分は年6.6%となります。)の割合で利子税がかかります。
 ただし、この利子税の割合は、各年分の前年11月30日の日本銀行が定める基準割引率に4%を加算した割合が年7.3%に満たない場合には、その年中においては次の算式により計算した割合(0.1%未満の端数切捨て)になります。

 

(算式)
 利子税の割合=3.6%又は6.6%×(前年11月30日の日本銀行が定める基準割引率+4%)÷7.3%

 

(措法70の6、70の6の2、70の6の3、93、措令40の7、措規23の8)

 

参考: 関連コード

 

4438 農業後継者が農地等の贈与を受けた場合の納税猶予の特例

 

国税庁HPより

 

詳しくは、国税庁HP No. 4147 農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例  を参照

 

<長松ミニ解説>

 

農業を営んでいる人(農家)の農地を相続した場合、一定の要件を満たせば、農地に対する相続税が大幅に納税猶予されます。

 

納税の猶予とは、一定の条件を満たしている場合まで、相続税の納税を猶予するもので、条件を外れてしまった場合には、納税猶予されていた相続税を支払わなければなりません。

 

農家の場合、納税猶予額が多いので、メリットも多い反面、条件を外れた場合のリスクも年えお追うにつれ高くなりますので、特例の選択については、十分な説明を受け、納得されたうえで決断されるのが良いでしょう。

 

個人的な見解ですが、納税猶予という制度は、問題の先送り、及び拡大に繋がりかねないので、特例の適用を受けなくて済むのなら受けない方が良いでしょう。

 

 

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H24.10.2更新  広島市の長松税理士事務所